各社が告知に書いた言葉を並べてみると、値上げの理由は「原材料」「物流・エネルギー」「地政学・為替」の3つの層に整理できます。そして2026年の告知には、2025年にはなかった地政学の要因が3件から登場しています。
この記事は、メーカー・卸・小売が公式サイトで公表した価格改定告知の原文だけを素材にしています。値上げされた商品そのものの一覧は ペット用品 値上げ一覧 2026 にまとめています。
最終更新:2026年9月12日/出典:各社の価格改定告知(一次情報)/用語集/メーカー索引
結論:理由は3つの層に分かれています
8者が出した9件の告知文(いなばペットフードだけは2025年・2026年の2件)を読み比べると、挙げられている理由は次の3層に分かれます。
第1層:原材料 主原料、資材、副資材、包装資材。9件中7件が言及しています。いちばん多く、いちばん古くから挙がっている層です。
第2層:物流とエネルギー 輸送費、燃料費、物流コスト、原油価格、エネルギー価格。9件中6件が言及しています。ロイヤルカナン ジャポン(2025年)は、この層だけを理由として挙げています。
第3層:地政学と為替 中東情勢、地域紛争、ナフサ不足、円安。3件が言及していて、そのすべてが2026年の告知です。2025年の告知(①③)には登場しません。
なお、ここから挙げるのはあくまで「各社が説明として書いた内容」です。この記事が説明の因果関係を独自に検証したものではありません。
各社が公表している理由
9件の告知の原文です。この表がこの記事の中核になります。⑥は小売、⑦は卸が出した告知で、メーカーの出荷価格ではなく自社の販売価格についての改定である点にご注意ください。
| 告知主体 | 改定日・対象 | 告知の原文 | 出典 |
|---|---|---|---|
| ①ロイヤルカナン ジャポン | 2025年9月5日出荷分より/総合栄養食ドライ・ミルク | 「輸送費用や燃料費用の上昇」 | 公式告知 |
| ②日本ヒルズ・コルゲート | 2026年8月3日受注分より/サイエンス・ダイエット犬用ドライ | 「原材料費や人件費、物流費等の諸経費の高騰」 | 公式告知 |
| ③いなばペットフード | 2025年9月1日出荷分より/ちゅ〜る等308アイテム | 「資材・諸原料・副資材などは急激で大幅な値上り状況にあり、現在もまた上昇中」 | 公式告知 |
| ④いなばペットフード | 2026年9月1日出荷分より/ちゅ〜る等624アイテム | 「主原料価格の高止まりや人件費・諸経費の上昇、さらには地域紛争を背景とした包装資材等の高騰、為替変動による仕入れ価格の上昇」 | 公式告知 |
| ⑤ドギーマンハヤシ | 2026年9月1日/おやつ等約250商品 | 「長期化する円安に加え、中東情勢不安によるナフサ不足の影響、また様々な原材料及びエネルギー価格の高騰が継続していることに伴い、この度、一部商品に関して価格改定を行わせていただくこととなりました。」 | 公式告知 |
| ⑥ペテモ/イオンペット(小売) | 2026年8〜9月/販売価格改定 | 「長期的・継続的な原材料価格の高騰、原油価格の高騰による輸送コストの上昇により、販売価格の見直しをさせていただきます。」 | 公式告知 |
| ⑦P2 Wholesale(卸) | 2026年10月1日/ロイヤルカナン ブリーダー向け製品 | 「原材料・物流コスト等の継続的な価格上昇のため」 | 公式告知 |
| ⑧オーエフティー(OFT STORE) | 2026年2月3日/対象の猫砂商品 | 「原材料費や物流コストの上昇に伴い…2026年2月3日(火)より、対象の猫砂商品の価格を改定させていただくこととなりました。」 | 公式告知 |
| ⑨常陸化工 | 2026年4月27日/おからの猫砂・販売休止の告知 | 「昨今の中東情勢の影響による原材料の供給不足、並びに製造上の諸事情により、安定的な製造販売が困難な状況」 | 公式告知 |
③と④は同じメーカーが1年違いで出した告知です。⑨だけは値上げではなく販売休止の告知で、2026年7月10日より順次販売を再開しています。
要因1:原材料 ──「上昇」から「高止まり」へ
いなばの2025年と2026年を読み比べる
同じメーカーが1年違いで出した2件の告知は、原材料についての書き方が変わっています。
2025年(③) 「資材・諸原料・副資材などは急激で大幅な値上り状況にあり、現在もまた上昇中」
2026年(④) 「主原料価格の高止まりや人件費・諸経費の上昇、さらには地域紛争を背景とした包装資材等の高騰、為替変動による仕入れ価格の上昇」
2025年は「値上り」「上昇中」と、いままさに動いている最中だと示す言葉が並びます。2026年は主原料について「高止まり」に変わりました。上がり続けているのではなく、上がった水準のまま下りてこない、という書き方ですね。
同時に、2026年の告知では主原料以外の要因が増えています。人件費・諸経費、包装資材、為替。2025年の告知が資材と原料をまとめて1文で書いていたのに対して、2026年は要因を並べて列挙する形になりました。
対象アイテム数も変わっています。2025年は308アイテム、2026年は624アイテム。1年で倍増しています。
ただし、表現が変わったこと・アイテム数が倍増したことが何を意味するかまでは、告知には書かれていません。ここで確認できるのは、同じメーカーの説明の書き方が1年で変化したという事実までです。
いちばん多く挙がっているのが原材料です
原材料の価格に触れているのは9件中7件です(②③④⑤⑥⑦⑧)。
言い方は各社で分かれます。「原材料費」(②⑧)、「資材・諸原料・副資材」(③)、「主原料価格」と「包装資材」(④)、「様々な原材料」(⑤)、「原材料価格」(⑥)、「原材料」(⑦)。中身がどの品目を指すのかは、どの告知にも書かれていません。
触れていないのは①と⑨の2件です。①ロイヤルカナン ジャポンは輸送費用と燃料費用だけを挙げています。⑨常陸化工は「原材料」という語を使っていますが、価格ではなく供給不足の文脈です。値上げではなく販売休止の告知なので、性質が違います。
要因2:物流とエネルギー
輸送・燃料・エネルギーに触れているのは①②⑤⑥⑦⑧の6件です。
①ロイヤルカナン ジャポン(2025年)は「輸送費用や燃料費用の上昇」だけを理由に挙げています。9件のなかで唯一、原材料に触れずに物流・エネルギーだけを理由とした告知です。他社が複数の要因を並べるなかで、この告知は2項目に絞られています。
⑥ペテモ/イオンペットは「原油価格の高騰による輸送コストの上昇」と、原油から輸送コストへという経路まで書いています。小売の販売価格改定の告知である点も他と違います。メーカー側の出荷価格ではなく、店頭で売る側の価格の見直しです。
⑦P2 Wholesale は「原材料・物流コスト等の継続的な価格上昇のため」。ロイヤルカナンのブリーダー向け製品を扱う卸で、①のロイヤルカナン ジャポンとは別の告知主体です。「継続的な」という語が入っています。
⑧オーエフティーも「原材料費や物流コストの上昇」で、こちらは猫砂商品が対象です。
⑤ドギーマンハヤシは「エネルギー価格の高騰」という書き方で、輸送に限らない形でこの層に触れています。
なお②と④は「物流費等の諸経費」「人件費・諸経費」という形で、諸経費という語に複数の費目をまとめています。②は物流費を明示していますが、④は明示していません。
要因3:地政学と為替 ── 2026年に加わった新しい要因
中東情勢とナフサ
中東情勢・地域紛争に触れているのは④⑤⑨の3件です。いずれも2026年の告知で、2025年の2件(①③)には登場しません。
- ④いなば(2026年):「地域紛争を背景とした包装資材等の高騰」
- ⑤ドギーマンハヤシ:「中東情勢不安によるナフサ不足の影響」
- ⑨常陸化工:「昨今の中東情勢の影響による原材料の供給不足」
ナフサというのは、石油から作られるプラスチックの原料です。ペット用品では包装フィルム、パウチ、トレイ、猫砂やペットシーツの袋などに使われます。⑤が「ナフサ不足」を、④が「包装資材等の高騰」を挙げているのは、同じ入口を別の言葉で書いたものと読めます。
中東情勢そのものについて、この記事は評価も論評もしません。ここで示しているのは、3者が2026年の告知にこの語を書いた、という事実だけです。また、情勢とナフサと包装資材のあいだの因果関係をこの記事が検証したわけではなく、⑤が告知にそう書いている、ということです。
円安
為替に触れているのは④⑤の2件です。
- ④いなば(2026年):「為替変動による仕入れ価格の上昇」
- ⑤ドギーマンハヤシ:「長期化する円安」
④は「為替変動」、⑤は「長期化する円安」と、書き方が違います。⑤は「長期化する」という語で期間に触れていますが、いつからを指すのかは告知に書かれていません。
なお、具体的な為替レートや原油価格の数値は、どの告知にも記載がありません。この記事も、手元の一次情報にない数値は扱いません。
なぜフード以外にも値上がりするのか
値上げはフードだけではありません。⑧オーエフティーと⑨常陸化工は、いずれも猫砂に関する告知です。
共通の入口として告知に現れているのが、包装資材と樹脂です。ナフサはプラスチックの原料なので、フードのパウチやトレイにも、猫砂やペットシーツの袋にも使われます。フードの中身(肉や穀物)とは別の経路で、包装という側から価格に触れてくる要因なんですね。④が「包装資材等の高騰」を挙げているのも、⑤が「ナフサ不足」を挙げているのも、ここに関わります。
そして⑨常陸化工は、値上げではなく販売休止の告知です。「安定的な製造販売が困難な状況」として、おからの猫砂の販売を一度止めています(2026年7月10日より順次販売を再開)。
価格が上がるより手前に、供給そのものが止まるという段階があることを示す一例です。ただし、⑨の告知は「中東情勢の影響による原材料の供給不足、並びに製造上の諸事情」と書いていて、供給不足以外の要因も併記されています。休止の理由がどの程度どちらに帰属するかは、告知からは判別できません。
理由は説明されるが、数字は出てこない
9件の告知に共通するのは、理由が書かれている一方で、改定率も個別価格も書かれていないことです。
ロイヤルカナン、ヒルズ、いなばの告知はいずれも、開示されているのは「対象アイテム数」と「改定日」だけです。「何%上がるのか」「どの商品がいくらになるのか」は記載されていません。
いなばの場合、2025年は308アイテム、2026年は624アイテムという数字は出ています。しかしこれは対象の広さを示す数字であって、上げ幅の数字ではありません。
そうなると、飼い主が実際の改定額を知る手段は、改定日の前後で販売店の価格を自分で見比べることになります。告知だけを読んでも、自分の家計にいくら効くのかは分かりません。理由は説明するのに数字は出さない。この非対称は、9件すべてに共通しています。
今後どう見ればいいか
今後の値上げについて、この記事は予測を書きません。告知に書かれていないことは書けないからです。
告知から言える材料は3つあります。
1. 「高止まり」という表現が使われている いなばの2026年の告知は、主原料について「値上り…上昇中」(2025年)から「高止まり」(2026年)へ書き方を変えました。上がった水準が下りていないという状態を、メーカー自身が説明として書いています。
2. 「継続的」「長期化する」「継続している」という語が複数に出てくる ⑦「継続的な価格上昇」、⑤「長期化する円安」「継続していることに伴い」、⑥「長期的・継続的な原材料価格の高騰」。一時的な事情としては書かれていません。
3. 2026年に新しい層が加わった 2025年の告知(①③)にはなかった地政学要因が、2026年の告知(④⑤⑨)に3件から現れました。要因が減ったのではなく、増えた形になっています。
これらはあくまで各社が告知に書いた言葉から読み取れる材料であって、今後の価格がどうなるかを示すものではありません。
飼い主にできること
値上げの理由は、飼い主の側でどうにかできる層にはありません。原材料も、原油も、為替も、個人の選択の外側にあります。
できるのは、買い方の側を見直すことです。
いまいくら使っているかを把握する
フードは毎月の支出として把握されていても、猫砂やシーツは意識されにくい費目ですよね。⑧⑨が示すように、値上げはフード以外にも及んでいます。猫砂の月額については 猫砂は1ヶ月いくら? で整理しています。
同じものをどこで買うかを見直す
⑥のように、小売側が販売価格を改定する場合もあります。同じ商品でも、販売チャネルによって価格は違います。購入先ごとの比較は ペット用品はどこで買うのが安いか にまとめています。
いま与えているフードを別の商品に変えることは、この記事では勧めません。フードの切り替えは価格以外の条件が関わる判断であり、値上げを理由に急ぐべきものではないからです。
出典
この記事で引用した告知は以下の9件です。
- ロイヤルカナン ジャポン「価格改定のお知らせ」 https://www.royalcanin.com/jp/about-us/news/2505-price-revision-notice
- 日本ヒルズ・コルゲート「価格改定のお知らせ」 https://www.hills.co.jp/about-us/press-releases/price-revision-202607
- いなばペットフード「価格改定のお知らせ」(2025年) https://www.inaba-foods.jp/release/detail/1101
- いなばペットフード「価格改定のお知らせ」(2026年) https://www.inaba-foods.jp/release/detail/1326
- ドギーマンハヤシ「価格改定のお知らせ」 https://doggyman.shop/view/news/20260821135653
- ペテモ/イオンペット「販売価格改定のお知らせ」 https://shop.petemo.jp/news/260813
- P2 Wholesale「価格改定のお知らせ」 https://p2-wholesale.com/news_34.php
- オーエフティー(OFT STORE)「猫砂商品 価格改定のお知らせ」 https://oft-store.com/blogs/contents/20260115
- 常陸化工「販売休止のお知らせ」 https://www.hitachi-kakou.com/info_20260427on6.html
